読了

藤田晋『渋谷ではたらく社長の告白』(アメーバブックス/単行本)

マザーズ上場後の、倒産しそうなあたりが面白かった。上場益は株主たちの先行投資であり、企業は新規事業開発や既存事業の拡大に投下して回収・増益しなくちゃならないって基本原則を思い出した。ゴリゴリの営業マンがメディアにも強みを持つ企業を育ててる…

スタニスワフ・レム(著)、沼野充義(訳)『完全な真空(文学の冒険シリーズ)』(国書刊行会/単行本)

イマジネーションの素がてんこ盛り。完全な真空 (文学の冒険シリーズ)作者: スタニスワフ・レム,沼野充義出版社/メーカー: 国書刊行会発売日: 1989/12/01メディア: 単行本購入: 4人 クリック: 94回この商品を含むブログ (71件) を見る2009/06/21読了(79冊目…

小島信夫『抱擁家族』(講談社文芸文庫/文庫)

妻とアメリカ兵の不貞、病気、家の建設。自らの属する社会を再構築しようとする夫の努力と、その喪失。夫がアイデンティティを保つために関係性に依存してるのが、戦後すぐの話なのに、なんだかすごく今っぽい。狂気をこんなにも冷静に書けるもんなんだなー…

沼野恭子『ロシア文学の食卓』(NHKブックス/単行本)

ボルシチやピロシキ、お茶を沸かすときに欠かせないサモワールなど、ロシアの食文化を通じて成される文学紹介。映画でも小説でも、食の描写についつい引き込まれてしまう身としては大変楽しめた1冊。ブリヌィ食べてみたい。イクラやキャビアを塗りつけてバタ…

スタニスワフ・レム(著)、飯田規和(訳)『ソラリスの陽のもとに』(ハヤカワ文庫/文庫)

惑星ソラリスでの未知の生物との邂逅を描くSF。人間の概念では理解しえない存在を、人間はどうとらえるのか、とらえられるのか。示唆に富みすぎててなんつったらいいのかわからんな。すげー面白かったです。ソラリスの陽のもとに (ハヤカワ文庫 SF 237)作者:…

HIRO『Bボーイサラリーマン』(幻冬舎文庫/文庫)

EXILEのリーダーHIROの自伝的エッセイ。あとがきで、ぜんぶオレが書いたとはもちろん言わない的なコメントがあって噴いた。なんたる自己開示。ZOOに参加するまでのシンデレラストーリーや、MAX松浦との絡みはけっこうスリリング。業界の裏側を見たような気に…

村上春樹『若い読者のための短編小説案内』(文春文庫/文庫)

村上春樹の小説の読み方を疑似体験できたのが収穫。小説を楽しむ新しい定規を手に入れた感じ。読み方ってなかなか体得できないもん、そういう意味ではお役立ちな本なのかも。それに、取り上げられている作家が未読のばあい、すごく読みたくなる。村上春樹が…

浅草キッド『お笑い 男の星座―芸能私闘編』(文春文庫/文庫)

男臭い!ホモソーシャルな世界だなー。浅草キッドが覗いた、芸能界の素っ裸。芸も愛もあって読後感が大変よかった。お笑い 男の星座―芸能私闘編 (文春文庫)作者: 浅草キッド出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2003/03/07メディア: 文庫購入: 4人 クリック: 2…

池上真由美『江戸庶民の信仰と行楽』(同成社/単行本)

伊勢参りに代表される、江戸に住む庶民にとって極上の娯楽だった『旅』。それは、信仰と深く結びついていた。行楽の形態、行楽地となった信仰の場にまつわる宗教的観念から、観光客を呼び寄せるためのPR戦略の数々まで。江戸という時代を『信仰』と『行楽』…

松本人志『遺書』(朝日新聞社/新書)

ダウンタウン松本人志が語るお笑いプロ論。自力で自説を掴み取った人は強いよねー。解りやすく力強い言葉が多いので、ついつい感化されちゃいそう。遺書作者: 松本人志出版社/メーカー: 朝日新聞社発売日: 1994/09/01メディア: 新書購入: 2人 クリック: 44回…

木田元『反哲学入門』(新潮社/単行本)

こういうの読みたかったのよー。現代までの『哲学』の流れを俯瞰して、平易な言葉で説いてくれてる。哲学がぐっと解りやすくなった。詳しくはまた。反哲学入門作者: 木田元出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2007/12メディア: 単行本購入: 5人 クリック: 41回…

姜信子『日韓音楽ノート―「越境」する旅人の歌を追って』(岩波新書/新書)

在日韓国人三世の著者が自らのアイデンティティを模索するかのように、日韓の音楽の歴史を旅した記録。韓国のポンチャック(別称:トロット)のメロディが日本の演歌にそっくりなのはなんでだろ?でもメロディは似てるのに、ポンチャックは四つ打ち。同じよ…

渡辺洋三『法とは何か』(岩波新書/新書)

法の体系や思想を著者の意見を交えて読み解く、法の入門書。社会の基盤になっている概念ってどんなもんじゃろ、と思って読んでみた。西洋では資本主義市場の要請から法が必要とされ整備された健全なものだったのに対して、日本のそれは開国に伴ったトップダ…

阿部主計『妖怪学入門』(雄山閣/単行本)

『妖怪』という概念が成立しえたのは、どのような背景からか?といった文化論にはじまり、妖怪の起源、各妖怪のキャラ設定、さらにはその周辺文化までを俯瞰的に捉えた入門書。妖怪ってそもそも、闇夜で感じる怖さだったり、人の恨みつらみだったり、常識で…

勝間和代『勝間和代のインディペンデントな生き方 実践ガイド』(ディスカヴァー・トゥエンティワン/新書)

女性が自立し、『自分らしく生きる』ためにはどうしたら良いのか?『女性として』成功してきた著者がそのノウハウを過去の自分と同じように悩む同輩に向けて公開。わかったー。勝間和代が売れてるのは答えが書いてあるからなのね。「自分のときはこうだった…

三木成夫『内臓のはたらきと子どものこころ』(築地書館/単行本)

『こころ』の起源を内臓、つまりはらわたの発達から読み解く講演を文章化した、三木成夫のデビュー作。『胎児の世界―人類の生命記憶』を読んだときも強く感じたのだけど、ほんと紙一重だよなー、この人の論調って。「切れる頭とは言うけれど、切れるこころと…

赤塚不二夫、タモリ、北野武、松本人志、立川談志、荒木経惟、ダニエル・カール、柳美里『赤塚不二夫対談集 これでいいのだ。』(MF文庫ダ・ヴィンチ/文庫)

赤塚不二夫の対談集。相手は、タモリ、柳美里、立川談志、北野武、ダニエル・カール、荒木経惟、松本人志。こんな言い方したら赤塚せんせいはきっと嫌がるんだろうけど、すごく芸術家肌の人なんだなと思った。「面白い」ってことに真摯に向き合って、埃や泥…

絲山秋子『豚キムチにジンクスはあるのか―絲的炊事記』(マガジンハウス/単行本)

群馬県高崎市に住む一人暮らしで酒飲みの芥川賞作家が雑誌『Hanako』に連載していた、自炊生活試行錯誤エッセイ。美味しそう。読んでると、なによりお腹が減ってくる。高山なおみの『日々ごはん』みたいな軽やかさがあって気持ちよく読めた。特に表題の回は…

中島義道『カントの人間学』(講談社現代新書/新書)

カントの人となりに迫りながら、彼の哲学を紐解いていくカント哲学の入門書。読みやすかった!エゴイズムや虚栄心といった今ぼくがまさに気になる分野の先達であるカントですが、いかんせん難しくって。これなら楽しみながら読める。本書はカントの著作を追…

脇本平也『宗教学入門』(講談社学術文庫/文庫)

「宗教」とは何なのかを体系化する。「事実を客観的に取り上げて主観的な価値判断を避け」「宗教を人間の生活現象の1局面として捉え」「特定の一宗教ではなく複数の多宗教を資料として取り扱う」ことを旨とした「宗教学」の入門書。これは良い入門書。信仰の…

勝間和代『無理なく続けられる 年収10倍アップ勉強法』(ディスカヴァー・トゥエンティワン/単行本)

公認会計士二次試験を史上最年少の19歳で合格し、フルタイムで仕事をしながら3人の子どもを育て、中小企業診断士試験とオンライン情報処理技術者試験を合格。さらにTOEICは新卒時420点から3年間で900点へアップ、社会人大学院ではファイナンスMBAを取得し、…

アリストテレース(著)、ホラーティウス(著)、松本仁助(訳)、岡道男(訳)『詩学』(岩波文庫/文庫)

特に悲劇を題材とした、お話の作り方のハウツー本。これ2000年以上前に書かれたテキストですよね、ぼくらのストーリーの作り方って彼が浮き彫りにしたアウトラインから出てないじゃん!という驚きが一気に読み終えた感想。あえてハウツー本なんて言いたくな…

阿刀田高『楽しい古事記』(角川文庫/文庫)

枝葉はバッサリと切り落とし、古事記のエッセンスだけを抽出したエッセイ。神様の鼻の穴からまた神様が生まれてくるとか、発想が自由すぎて笑える。アミニズム的な視点で自然の猛威や雄大さを理解しようとしたからなんだろうか。神様たち、ガンガンまぐわっ…

藤枝静男『田紳有楽;空気頭』(講談社文芸文庫/文庫)

贋作の抹茶茶碗が人に化け、ぐい飲みが金魚と子を作り、弥勒菩薩がこの世の終わりを笑い太鼓を叩く。破天荒な世界を精密な筆で描いた『田紳有楽』と、「私小説」のフォーマットを踏襲しつつも自然描写だけでは記しきれない人間の業のようなものを表現しよう…

阿刀田高『新約聖書を知っていますか』(新潮文庫/文庫)

『旧約聖書を知っていますか』の続編とも言うべき、新約聖書を題材にしたエッセイ。ユダヤ人のための宗教だったユダヤ教を、誰もが信仰できるものに置換するために、イエスってアイコンは必要だったのね、と納得。宗教周辺、まだまだおもろいなー。それにし…

阿刀田高『旧約聖書を知っていますか』(新潮文庫/文庫)

創世記にモーセの物語、『なぜ私だけが苦しむのか』でも取り上げられていたヨブ記などを、ミュージカルに例えてみたり、するめに例えてみたり…。旧約聖書のエッセンスだけを抽出した、異教徒のためのエッセイ。とっつきやすいのが何より良かった。いちおうミ…

アルバート・アインシュタイン(著)、ジグムント・フロイト(著)、浅見昇吾(訳)、養老孟司(著)『ヒトはなぜ戦争をするのか?―アインシュタインとフロイトの往復書簡』(花風社/単行本)

1932年、国連から「人間にとって最も大事だと思われる問題を取り上げ、一番意見を交換したい相手と書簡を交わしてください」と依頼され筆を取ったアインシュタイン。「ヒトはなぜ戦争をしてしまうのか」という彼の問に、フロイトが応える往復書簡。養老孟司…

シェイクスピア(著)、安西徹雄(訳)『リア王』(光文社古典新訳文庫/文庫)

3人の娘たちに自らの領土をすべて譲り引退すると宣言した王、リア。娘たちの愛に満たされ生きていくはずの余生が、猜疑と裏切りに翻弄されていく様子を描いた戯曲。当時、これだけ欺瞞を暴く、ぶっちゃけた話を書くのはセンセーショナルだったんだろうなー。…

穂村弘『現実入門―ほんとにみんなこんなことを?』(光文社文庫/文庫)

妄想ばかりしていて人生の経験値が異常に低い、と自称する著者。企画に乗じて献血に合コン、モデルルーム見学、占い、賃貸の申しこみ、そして結婚といった「現実」を体験する。その様子をレポートしたエッセイ。笑った。著者のダメ男っぷりが共感できすぎて…

H.S.クシュナー(著)、斎藤武(訳)「なぜ私だけが苦しむのか―現代のヨブ記」(岩波現代文庫/文庫)

「この苦しみを、なぜ神はわたしに与えるのか」。その設問自体が間違っていたと、ユダヤ教のラビ(宗教者)は気付く。我が子を早老病でなくした著者が、自らが信じていた神の姿を問い直した記録。世の中って、ほんと生きづらいよな。理不尽なこと多いし、昨…