小島信夫『抱擁家族』(講談社文芸文庫/文庫)

妻とアメリカ兵の不貞、病気、家の建設。自らの属する社会を再構築しようとする夫の努力と、その喪失。

夫がアイデンティティを保つために関係性に依存してるのが、戦後すぐの話なのに、なんだかすごく今っぽい。狂気をこんなにも冷静に書けるもんなんだなー。薄氷の上をそろりそろりと進むアリのような、慎重で清潔な文体が激しく好み。

抱擁家族 (講談社文芸文庫)

抱擁家族 (講談社文芸文庫)

2009/06/10読了(78冊目)