水村美苗『本格小説 上・下』(新潮文庫/文庫)

ニューヨークでお抱え運転手から億万長者に成り上がっていった男、東太郎を中心に、様々な人々の『人生』を描く小説らしい小説。抑えがたい、要するに人間くさいと言えるような感情や、生まれてきた環境など人として避けることのできない状況によって、少しずつ思惑や生き方自体がズレていくその様子を用心深く描写していく筆力スゲー、小説読んだなーという満足感が得られてホクホク。

恋愛小説はどうも独りよがりと言うか、読んでる間、居心地のわるい感じがして苦手なのだけど、これはスラスラ読めた。全体の1/4をも締める小説らしい小説を書くことへのエクスキューズや、話者を巧みに入れ替える構成が功を奏してるのかもなー。

本格小説〈上〉 (新潮文庫)

本格小説〈上〉 (新潮文庫)

本格小説〈下〉 (新潮文庫)

本格小説〈下〉 (新潮文庫)

2009/01/04読了(42、43冊目)