2009-01-01から1ヶ月間の記事一覧

吉田篤弘『78』(小学館文庫/文庫)

78回転で回るSP盤。その存在を中心に、SPレコード専門店で行われる穏やかなやりとりや、そこに通う男性2人の少年時代、さらにはSP盤を吹き込んだ往年のバンドメンバーが手にする生活までが展開される。数々の短いお話が緩やかに関係しあう、オムニバス形式の…

中島梓『タナトスの子供たち―過剰適応の生態学』(ちくま文庫/文庫)

男性同士の性愛を描くジャンル「やおい」。女性不在の物語になんで少女たちが入れ込むのか。「やおう」とは何なのか、を切り口に現代の日本が抱える歪みを考察する。さすが著者自身が「やおい」の創始者。自身の感覚と各種同人誌の実例を交えて丁寧にやおい…

リチャード・ドーキンス(著)、垂水雄二(訳)『神は妄想である—宗教との決別』(早川書房/単行本)

神、という存在をなぜ妄信する人がいるのか。普通では眉をひそめる様な行動すら、信仰だと言えばまかり通ってしまう。そんな社会がなぜ成立するのか。アメリカ社会の絶対的な価値観である『宗教』に対し、ちょっとおかしくないスか?と科学的な見地から問い…

ドストエフスキー(著)、安岡治子(訳)『地下室の手記』(光文社古典新訳文庫/文庫)

自意識の過剰さゆえに地下室にひきこもることになった40男の手記という形をとった小説。2部構成になっており、前半が独白、後半はひきこもることになった原因だと男が考えているいくつかの出来事に関する記録。笑える。でも、その笑いがぜんぶ自分に返ってく…

速水健朗『ケータイ小説的。――“再ヤンキー化”時代の少女たち』(原書房/単行本)

ケータイ小説の表現手法やそれらを「リアル」だと言い支持する若者たちの文化的背景を、浜崎あゆみやヤンキー文化から紐解いていく文化批評。ぼくはケータイ小説は『Deep Love』に『恋空』、『あたし彼女』くらいしかちゃんと読んだことなかったんですが、共…

水村美苗『本格小説 上・下』(新潮文庫/文庫)

ニューヨークでお抱え運転手から億万長者に成り上がっていった男、東太郎を中心に、様々な人々の『人生』を描く小説らしい小説。抑えがたい、要するに人間くさいと言えるような感情や、生まれてきた環境など人として避けることのできない状況によって、少し…

スタンレー・ミルグラム(著)、山形浩生(訳)『服従の心理』(河出書房新社/単行本)

「権威に服従した状態であれば、普段では考えられない残酷な行動をしてしまうものである」。人間のそんな側面を浮き彫りにした「アイヒマン実験」のレポート。「責任は取りますので」と言われ嬉々として実験を進めていたのに、後に自らにとってストレスのな…