ドストエフスキー(著)、安岡治子(訳)『地下室の手記』(光文社古典新訳文庫/文庫)

自意識の過剰さゆえに地下室にひきこもることになった40男の手記という形をとった小説。2部構成になっており、前半が独白、後半はひきこもることになった原因だと男が考えているいくつかの出来事に関する記録。笑える。でも、その笑いがぜんぶ自分に返ってくるような文章でした。

「地下室って良くある自意識のメタファーだよね深刻ぶっててウケるわー」とか、「けっきょく他者に受け入れられたいっていう願望で動いてんじゃんオッサン!」みたいなコメントは要注意。読み終わり振り返ってみれば、ああこれ俺のことだよと認めざるを得ない。ヒリヒリしてんなー。

「自分でいることを嫌悪する感覚」、みたいなものこそ生きていく原動力なんじゃねえの、なんて吐き気がする感想だけど、でも、ちょう腑に落ちました。メタの視点に絡め取られすぎちゃって、どこ行ったらいいのか分からない同世代が居たら、お暇ならぜひどうぞとオススメしたい。

訳について。今回ぼくが読んだのは新訳で、かなり読みやすかった。青い表紙の新潮文庫版はもう少し大仰な言い回しが多かったかな。実は以前、新潮文庫版で挫折していたのです。怠惰な人間にもおもしろい文章を読むチャンスを再度与えてくれる新訳ありがとーという気分。

地下室の手記(光文社古典新訳文庫)

地下室の手記(光文社古典新訳文庫)

2009/01/11読了(45冊目)