中島梓『タナトスの子供たち―過剰適応の生態学』(ちくま文庫/文庫)
男性同士の性愛を描くジャンル「やおい」。女性不在の物語になんで少女たちが入れ込むのか。「やおう」とは何なのか、を切り口に現代の日本が抱える歪みを考察する。
さすが著者自身が「やおい」の創始者。自身の感覚と各種同人誌の実例を交えて丁寧にやおいの実情を解き明かす件が分かりやすい。社会から期待される女性像に窮屈さを感じる女子が少女マンガ以降、自己投影を託したストーリーが「やおい」であるという分析は爽快。
男からすると、ウケが先にイカされるものの継続して快感に打ち震えつつセメを受け入れるとかなんで書くんだろうありえないだろうって思ってたんだよな。自分がぜったいに傷つかない、しかもすべてのキャラクターに感情移入できる著者にとっての箱庭だと見れば、その展開もなるほど納得でした。
と、同時に小説や漫画といった文化を介してやっと社会と立ち向かえるようになったやおい女子の自立にグっときた。ここだけはなんだかわかる、ような気がする。窮屈だもんなあ、社会って(なんて書くのはおこがましいと思うけど、一応)。
今で言えば、ディスコミュニケーションのためのコミュニケーションってブログでもっと簡単にできるようになってきたんだよなーきっと、なんてことも考えたのですが男がこれについて語ると、どんな方法とっても正解にたどり着けなさそうで、性差って大変ね!と思いました。
- 作者: 中島梓
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2005/05
- メディア: 文庫
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