阿刀田高『楽しい古事記』(角川文庫/文庫)

枝葉はバッサリと切り落とし、古事記のエッセンスだけを抽出したエッセイ。

神様の鼻の穴からまた神様が生まれてくるとか、発想が自由すぎて笑える。アミニズム的な視点で自然の猛威や雄大さを理解しようとしたからなんだろうか。神様たち、ガンガンまぐわってぽろっぽろ子供(またそれも神様なんだけど)産むし、ばっさばっさ殺しあうし嬉しければ踊るし、なんともパワフルな話をでっち上げたもんだ、と感心しきり。日本人、元気だったんだなあ。

これだけ荒唐無稽なストーリーである古事記天皇制確立のために書かれた日本書紀が底本にしたと言われているのも、なんだか微笑ましいです。ニポンて、トテモ朴訥な国だったんデスね。

著者の阿刀田高は足しげく神話の残る地へと赴いている。エッセイを書くテクニックなんだろうけど、身近な場所に神話が残され生活に溶け込んでいることを気づかせてくれるので楽しい。老後、民話や風土史を研究しだすジイさんの気持ちが良く分かりました。追い始めたらしばらく飽きないんですね、この方面は。

楽しい古事記 (角川文庫)

楽しい古事記 (角川文庫)

2009/03/15読了(58冊目)