アリストテレース(著)、ホラーティウス(著)、松本仁助(訳)、岡道男(訳)『詩学』(岩波文庫/文庫)

特に悲劇を題材とした、お話の作り方のハウツー本。

これ2000年以上前に書かれたテキストですよね、ぼくらのストーリーの作り方って彼が浮き彫りにしたアウトラインから出てないじゃん!という驚きが一気に読み終えた感想。あえてハウツー本なんて言いたくなるくらい、すぐ使えてしかも普遍的、加えて本質的なことが書いてあってびっくりした。

ミーメーシス(模倣)に関する論が印象的だったなー。人間は再現されたものを好む、って話。「それ知ってる!そうそう!」なんて頷くとき、妙な気持ちよさがあるじゃないですか。アリストテレスはあの感覚を引き起こす模倣という行為を指して、ミーメーシスと呼んでいる。現実に起きたことを直接目にするのは嫌がる一方で、その現実を再現した絵や彫刻、演劇を見ることを人は喜ぶと彼は続けます。

これって完全に、インフォメーションデザインの話ですよね。複雑な現実を解体して、訴求力のある事実を大衆がキャッチアップしやすく、しかも自分が既に発見していたと思えるような解りやすさに編集する。後輩の書いた広告コピーに、「これで人が心動かされると思うワケ?」なんて抽象的なダメだしをしていた自らを反省。アリストテレスせんせえが2000年以上前にその答えを簡潔に、聡明な文章にて書かれていらっしゃいました。イチから勉強させて頂きます…。

訳も読みやすく、注釈も充実。古典や演劇の基本的な素養のないぼくにも理解しやすい一冊でした。なにかしらのストーリーを書く人は、読んでおいて損はないかも。

アリストテレース詩学/ホラーティウス詩論 (岩波文庫)

アリストテレース詩学/ホラーティウス詩論 (岩波文庫)

2009/03/19読了(59冊目)