川端康成『みずうみ』(新潮文庫/文庫)

中学生以来の再読。以前の感想はずばりエロ小説。淫靡な、なんかいけないものを読んでいるような感覚が好きで、でも川端康成ってブンガクで偉い人なんでしょ?へんなのーなんて思いながら読んでいた気がする。今回は、構成の巧みさにびっくりした。尋常じゃないバランス感覚で書かれてるのな、この小説。

美しい女性を見ると後を付けずにいられない男の情景を描いたと思ったら、彼の内面描写にシームレスに移行、幼少期の思い出を1人称で語っていたと思えば突然タイムランが現在に戻り、ストーカーされていた側の女性について刻々と語る。パラノってるのに、視点がちょう冷静。「夢の中のような、自分と世界の境界線が曖昧になる感覚と、その瞬間ごとだけで成立する秩序が存在する」なんて、ついお決まりの文句であらわしたくなるような、すごい本。

昔よりは、本を読んで楽しめる範囲が広くなってきたかも、と思えたのもうれしい読書でした。

みずうみ (新潮文庫)

みずうみ (新潮文庫)

2008/05/20読了[14冊目]