ポール・ホフマン(著)、平石律子(訳) 『放浪の天才数学者エルデシュ』(草思社/単行本)

天才は極端だ。この本で取り上げられている数学者、ポール・エルデシュを知って、ますますそう思った。オイラーに次ぐ約1500篇という大量の論文を書き上げた彼の生涯は、極端な数学漬けだったそうです。

1日のうち19時間を問題を解くことに充て、世界中の数学者の家を突然訪ね共同研究を進めていく。数学以外には無頓着で、自宅すら持たず、身の回りのものはいつも持ち運んでいるブリーフケースにすべて詰め込まれていたそうだ。

そんなにも彼を魅了していたのは、SF(Supreme Fascist:神様)だけが知る宇宙の真理。エレガントな証明によって世界のあるべき姿が提示される。その瞬間を真摯に追い続けた一生は、きっと僕には見えないような、美しい世界を見続けたものだったんだろうなー。後続の研究者に対するまなざしも優しい。彼にとって他の研究者はライバルではなく、真理を追究する仲間なんだということが伺い知れる。

本文中には数学の理論に関する言及も多く出てくるけど、比較的読みやすく、数学が苦手な人でも理解しやすいと思う。なにせエルディシュが提示した理論はシンプルだ。世界は本来単純で、複雑にしてるのはきっと人間の関係性のせいなんだろう、なんて言いたくなるようなすがすがしさがありました。

放浪の天才数学者エルデシュ

放浪の天才数学者エルデシュ

2008/09/07読了[31冊目]