阿部主計『妖怪学入門』(雄山閣/単行本)

『妖怪』という概念が成立しえたのは、どのような背景からか?といった文化論にはじまり、妖怪の起源、各妖怪のキャラ設定、さらにはその周辺文化までを俯瞰的に捉えた入門書。

妖怪ってそもそも、闇夜で感じる怖さだったり、人の恨みつらみだったり、常識では捉えきれないものを解ろうとするが故に発生した概念だった、というくだりがお気に入り。ロマンがあっていいよなー。

そんな出生のバックグラウンドをもった妖怪たちが、文化的に成熟していた江戸時代においては生活を彩るキャラクターとして栄華を極めた、という事実も興味深い。人間の娯楽に対する貪欲さはほんと偉大です。畏怖の象徴であったものを愛でるとかタフ過ぎるだろ。

「妖怪のディティールがより書き込まれ、細分化された背景には博物学の発達があった」って説をどっかで読んだ気がしたんだけど、本書では特に言及はナシ。未知の生物を理解しようとしたあまり、存在しない動物まで生み出しちゃった人間の好奇心の暴走っぷりステキ!って視点でこの説も好きなんだけど、メジャーじゃないのかなあ。機会があれば別の概論も読んでみたい。

妖怪学入門

妖怪学入門

2009/04/14読了(67冊目)