2009-01-01から1年間の記事一覧

阿刀田高『旧約聖書を知っていますか』(新潮文庫/文庫)

創世記にモーセの物語、『なぜ私だけが苦しむのか』でも取り上げられていたヨブ記などを、ミュージカルに例えてみたり、するめに例えてみたり…。旧約聖書のエッセンスだけを抽出した、異教徒のためのエッセイ。とっつきやすいのが何より良かった。いちおうミ…

アルバート・アインシュタイン(著)、ジグムント・フロイト(著)、浅見昇吾(訳)、養老孟司(著)『ヒトはなぜ戦争をするのか?―アインシュタインとフロイトの往復書簡』(花風社/単行本)

1932年、国連から「人間にとって最も大事だと思われる問題を取り上げ、一番意見を交換したい相手と書簡を交わしてください」と依頼され筆を取ったアインシュタイン。「ヒトはなぜ戦争をしてしまうのか」という彼の問に、フロイトが応える往復書簡。養老孟司…

シェイクスピア(著)、安西徹雄(訳)『リア王』(光文社古典新訳文庫/文庫)

3人の娘たちに自らの領土をすべて譲り引退すると宣言した王、リア。娘たちの愛に満たされ生きていくはずの余生が、猜疑と裏切りに翻弄されていく様子を描いた戯曲。当時、これだけ欺瞞を暴く、ぶっちゃけた話を書くのはセンセーショナルだったんだろうなー。…

穂村弘『現実入門―ほんとにみんなこんなことを?』(光文社文庫/文庫)

妄想ばかりしていて人生の経験値が異常に低い、と自称する著者。企画に乗じて献血に合コン、モデルルーム見学、占い、賃貸の申しこみ、そして結婚といった「現実」を体験する。その様子をレポートしたエッセイ。笑った。著者のダメ男っぷりが共感できすぎて…

H.S.クシュナー(著)、斎藤武(訳)「なぜ私だけが苦しむのか―現代のヨブ記」(岩波現代文庫/文庫)

「この苦しみを、なぜ神はわたしに与えるのか」。その設問自体が間違っていたと、ユダヤ教のラビ(宗教者)は気付く。我が子を早老病でなくした著者が、自らが信じていた神の姿を問い直した記録。世の中って、ほんと生きづらいよな。理不尽なこと多いし、昨…

フロイト(著)、中山元(訳)『人はなぜ戦争をするのか エロスとタナトス』(光文社古典新訳文庫/文庫)

第一次世界大戦を目の当たりにし、人には避けがたい攻撃性があるのではないかと疑問をもったアインシュタインに宛てた書簡を表題に、かけがえのない存在を失った状態である喪から鬱病を読み解く「喪とメランコリー」、超自我・自我・エスという審級を設定し…

須賀敦子『ミラノ霧の風景』(白水社/新書)

イタリア文学者である著者が、現地での生活を振り返るエッセイ。狭い路地が入り組むイタリアの街並みや、現地の人々とのコミュニケーションを丁寧に描写する文章のしなやかなこと。「うれしい」とか「かなしい」とか、そんな言葉使わなくても気持ちって表現…

吉田篤弘『78』(小学館文庫/文庫)

78回転で回るSP盤。その存在を中心に、SPレコード専門店で行われる穏やかなやりとりや、そこに通う男性2人の少年時代、さらにはSP盤を吹き込んだ往年のバンドメンバーが手にする生活までが展開される。数々の短いお話が緩やかに関係しあう、オムニバス形式の…

中島梓『タナトスの子供たち―過剰適応の生態学』(ちくま文庫/文庫)

男性同士の性愛を描くジャンル「やおい」。女性不在の物語になんで少女たちが入れ込むのか。「やおう」とは何なのか、を切り口に現代の日本が抱える歪みを考察する。さすが著者自身が「やおい」の創始者。自身の感覚と各種同人誌の実例を交えて丁寧にやおい…

リチャード・ドーキンス(著)、垂水雄二(訳)『神は妄想である—宗教との決別』(早川書房/単行本)

神、という存在をなぜ妄信する人がいるのか。普通では眉をひそめる様な行動すら、信仰だと言えばまかり通ってしまう。そんな社会がなぜ成立するのか。アメリカ社会の絶対的な価値観である『宗教』に対し、ちょっとおかしくないスか?と科学的な見地から問い…

ドストエフスキー(著)、安岡治子(訳)『地下室の手記』(光文社古典新訳文庫/文庫)

自意識の過剰さゆえに地下室にひきこもることになった40男の手記という形をとった小説。2部構成になっており、前半が独白、後半はひきこもることになった原因だと男が考えているいくつかの出来事に関する記録。笑える。でも、その笑いがぜんぶ自分に返ってく…

速水健朗『ケータイ小説的。――“再ヤンキー化”時代の少女たち』(原書房/単行本)

ケータイ小説の表現手法やそれらを「リアル」だと言い支持する若者たちの文化的背景を、浜崎あゆみやヤンキー文化から紐解いていく文化批評。ぼくはケータイ小説は『Deep Love』に『恋空』、『あたし彼女』くらいしかちゃんと読んだことなかったんですが、共…

水村美苗『本格小説 上・下』(新潮文庫/文庫)

ニューヨークでお抱え運転手から億万長者に成り上がっていった男、東太郎を中心に、様々な人々の『人生』を描く小説らしい小説。抑えがたい、要するに人間くさいと言えるような感情や、生まれてきた環境など人として避けることのできない状況によって、少し…

スタンレー・ミルグラム(著)、山形浩生(訳)『服従の心理』(河出書房新社/単行本)

「権威に服従した状態であれば、普段では考えられない残酷な行動をしてしまうものである」。人間のそんな側面を浮き彫りにした「アイヒマン実験」のレポート。「責任は取りますので」と言われ嬉々として実験を進めていたのに、後に自らにとってストレスのな…